今年も多くの薬局・ドラッグストアの新人研修を担当させて頂きました。
その中で例年とは違う光景を目にする事が多々ありました。
そこで今回は、今年度の研修を通じて感じた新人薬剤師の傾向と対策について書かせて頂きます。
結論から言いますと、例年以上に
グループ活動に対する消極的な姿勢
であったという事です。
弊社の研修では多くのグループワークに取り組んで頂くのですが、今年は例年以上に個人作業に没頭する傾向が見られました。
個人作業の速さ・精度は他業界に比べても引けを取らない一方、グループが課題に取り組むまでには時間を要しました。
具体的には、
①グループワーク開始5分後に会話が始まる
②実習からの気づき・学びをグループで振り返る場面で沈黙が続く
という事がありました。
上記②では、講師より
「グループで振り返ってください」
との指示をしても会話が始まらない為、改めて講師より
「まず各個人で振り返り(考えをまとめ)を行った後にグループ内で共有して下さい」
と指示する事で初めて会話がスタートする場面が散見されました。
この背景には、
1対複数の会話を行う前に十分な準備が必要
(準備が整うまで話したくない?)
という思考・感情が前提にある様に見えました。言うなれば・・
「集団討議においては一つ一つ着実に階段を登って行く様なコミュニケーション傾向」
が強まっている様に感じます。具体的には、
1段目:自分の意見を明確にする
2段目:自分の意見の伝え方を考える
3段目:他のメンバーに話をする、話を聴く
の様なイメージです。実務では1・2段目を瞬時に行い、3段目に移行する事が求められます。
臨機応変なコミュニケーションとはこの3段階をスピーディーに行う事を指します。
例年は「グループで振り返りを行ってください」という指示で、1~3段目が自動的に行われていましたが、今年はまず1・2段目を登る時間をとり、その上で3段目を登る時間を分けて取る必要があったわけです。
薬局ビジョンが発表されてから3年半経過し、多くの雑誌やWEBサイトでも今後求められる薬剤師への期待・役割といった事が記載されています。
その中の一つとしてコミュニケーション能力についても少なからず言及されています。多くの大学の教育カリキュラムにおいてもコミュニケーション力を高める事が重点課題であると謳っています。
一方今年の新人の現状からすると、期待と現状の大きな乖離を感じざるを得ません。
むしろこの乖離が広がっている感すらあります。ただ受け入れ側はこの現状を否定する事は出来ません。
これを所与の事として指導方法を検討する必要があります。
ではどの様に指導していけば良いでしょうか。
「これまでの新人や指導に対する思い込みを捨てる」
この一言に尽きます。月並みではありますが、受け入れ側が新人の頃に受けた指導はもはや通用しません。
もちろん受け入れ側が受けた指導方法を否定している訳では無く、今の新人の前提に合わないと言う事です。
つまり、1~3段目の上り下りに不自由さを感じる新人の割合が増加傾向にある事を指導の前提にする事です。
具体的には、
「小分けの指導」
が大切です。1段目、2段目、3段目と小分けにして、一つ一つ着実に階段を登る様に指導する事です。
一見消極的にも見える新人の態度の背景にこの様な前提があると考えれば、指導者側のストレスも軽減される事でしょう。
忙しい業務の中ではありますが、まずは今の新人の前提に合わせた指導方法からスタートする事が必須です。
ダーウィンの進化論に「変化する者が生き残る」という一節がありますが、新人の現状(考え方・時代背景)に対する共感的理解を前提とした指導を行う薬局が生き残ると言っても過言ではないでしょう。
本ブログが今年度新入社員の健全な成長、そして皆様の組織の更なる発展に寄与すれば嬉しいです。