オンラインセミナー『改正薬機法・法令遵守体制の整備のポイントとは?』概要

先日開催しましたオンラインセミナー(以降ウェビナー)

~薬局の法令遵守体制整備に求められる事~
改正薬機法・法令遵守体制の整備のポイントとは?

では多くの方にご聴講頂き、

「過去の法令違反事例について改めて認識するとともに、法令順守体制の構築の重要性についても理解できた。」

「開設者や責任役員が果たすべき役割だけでなく、全従業員が法令遵守を当たり前に考えられるような企業風土を醸成しなければならないと、これまで字面では理解していたが、その重要性について、強く共感させられた。」

「“企業風土の醸成”、不祥事の発端も改善に向けての苦労もそれに尽きるのではないかと思いつまされた。」

という感想を頂きました。
そこで今回から2回に分けて、上記ウェビナーの内容の一部をご紹介させて頂きます。

ウェビナーのアジェンダは、

■オリエンテーション
■薬局の法令遵守に関する改正の全体像
■改正の経緯(①背景②目指す所③求められる事④課題)
■薬局の取り組み事例
■まとめ

の5つです。それでは順を追って内容をご紹介します。

■オリエンテーション

本日のウェビナーのねらいは
『改正薬機法の法令遵守体制整備』に対応する為のポイントを整理する事、です。

「法令遵守体制」で思いつく事として

・責任役員の設置
・各種規定類の見直し・作成
・指針の作成
・管理者の専任

等があります。

「こういった事を今やらなくてはいけない」

とお考えの企業は多いかと思います。
ですが本当にこれらの対応で十分でしょうか。

実際に法令遵守体制の整備を考えたときには人間の心理(気持ち・感情)や組織の風土・文化等目に見えない事が大きく作用しています。

今回のウェビナーでは薬局・ドラッグストアにおける法令遵守体制の整備に求められる事についてそれらがどのように影響しているのか、という切り口からご紹介します。

 

■薬局の法令遵守に関する改正の全体像

薬機法(第4条・7条・8条・9条・9条の2)が今回の改正薬機法で変更されました。

今回の改正で主役となる薬局開設者について

・薬事に関する業務に責任を有する役員を届け出る
・法令遵守の為の指針を示す事
・法令遵守の為の体制構築
・必要な能力及び経験を有する管理者の選任
・意見申述内容の書面化
・意見を尊重しての措置を講じる義務

が新たに法律で定められました。

 

■改正の経緯(①改正の背景②改正により目指す所③薬局に求められている事④薬局の課題)

上記図の通り改正の背景には薬機法違反事例があります。
過去あった薬機法違反事例を紐解く事で法令遵守体制の整備に重要なポイントを見出すことができます。

今回のウェビナーでは

1.小林化工の薬物混入
2.薬局の処方箋付け替え

上記2つの事例をご紹介します。

1.小林化工の薬物混入事例

概要
・小林化工が製造しているイトラコナゾール錠50㎎に、睡眠薬のリルマザホンが混入。
・324名服用、健康被害245名(うち交通事故38名、死亡1名)。
・福井県は116日間の業務停止命令。

まずは、上記の事例の背景に何があったのかを見ていきたいと思います。

問題事象:睡眠剤混入

なぜ睡眠剤が混入してしまったのか

原因①:作業者が承認書の手順に従って作業しなかった。(コト)

なぜ原因①がおきたのか

原因②:承認書と齟齬する製造実態が放置されていた(コト)

なぜ原因②がおきたのか

原因③:齟齬を解消する為には一定の期間を有する為、安定供給体制を維持できない。(と困る)(ヒト)

原因①②は人の行動ですが、原因③の「と困る」、というのは人の心理です。
行動の背景にある人の心理が睡眠剤混入の原因の1つになっています。

次に

・なぜ安定供給体制を維持できないと困るのか、

を見ていきましょう。

その背景には政策・業界動向があります。
まず政策として後発品の使用促進があります。
政策を受けた結果業界動向として、

・急激な市場拡大
・激しさを増す競争環境

大きく分けてこの2つの環境変化が発生しました。

環境変化に対応する為に経営者の志向が

・販売至上主義(安定供給至上主義)

へと偏り、

・齟齬を解消する為には一定の期間を有する為、安定供給体制を維持できない。(と困る)

上記の考えへと至ったと考えられます。

 

その結果として

・GMP(製造管理・品質管理の基準)不在の生産拡大

が発生しました。

次に実際の現場でどのような事があったのかを見ていきましょう。

上記の図から、法令遵守の為の仕組みはあったもののその機能が不全となっていた実情がわかります。

ここまでをまとめると、

・経営者に過度な出荷優先の姿勢があった。

結果、組織に

・軍隊のような組織風土
・人材育成不足
・製販三役連絡会議の機能不全

が発生した。

結果、現場では

・法令遵守から逸脱した考え方・判断の慢性化
・不適切な業務プロセスの習慣化

が起こり、結果として

・薬物混入

が発生してしまった、という事例です。

この事例から分かる課題が2つあります。

・企業理念に基づく経営姿勢への転換
・法令遵守体制を堅持する為の組織体制の構築

です。

医療関連企業では

「国民の健康な生活を維持する為の事業」

と企業理念の中で多くの会社で謳われています。

今回の事例では経営者の中で企業理念よりも過度な出荷姿勢が中心になってしまった。
まずはそこからの転換を図る必要があります。

それがあった上での法令遵守体制を堅持する為の仕組み・規定の構築が必要になります。

今回はここまでとさせて頂きます。

次回のブログでは後編、

・薬局の処方箋の付け替え事例
・薬局の取り組み事例
・まとめ

についてご紹介致します。