ケアショー・ジャパン2019

年明けの1月に、保険外サービス・地域医療の動向に関する情報収集の目的で
ケアショージャパンに行ってきました。
出展300社、数十本のセミナーが開催されており、多くの来場者で大盛況でした。
そんな中、弊社が加盟しているNPhA主催のセミナーを聴講して参りました。

お題は「かかりつけ薬剤師・薬局の推進、そしてあるべき姿へ」でしたが、
地域医療の原点である

「かかりつけ薬剤師・薬局の在り方」

について再認識する有意義な内容でした。

そこで、今回は本セミナーの内容を取り上げさせて頂きます。

登壇者はアイングループ・株式会社あさひ調剤の運営研修部の方でした。
講話は、

アイングループのかかりつけ薬局に関する実績
かかりつけ薬局強化の背景
かかりつけ薬局の実績
かかりつけ機能強化の施策
まとめ

という流れで進んでいきました。

セミナー冒頭、アイングループの実績に関して下記の様な紹介がありました。

かかりつけ薬局919店舗
かかりつけ実績47万件(半年)
全店舗24時間
在宅実績9万件(半年)全店舗
(在宅未経験の薬剤師が珍しい)
疑義照会14万件
トレーシングレポート実績1万6千件
服用薬剤調整支援実績89件
健康サポート薬剤師研修受講ずみ薬剤師900名
高度薬学管理実績

実績もさることながら登壇者の方の語り口から、グループ全体で徹底した
マネジメントが行われている印象が、ヒシヒシと伝わってきました。

次にかかりつけ薬局強化の背景について紹介がありました。
具体的には、ここ2回の調剤報酬改定に関する受け止めた方について下記の様な
話がありました。

2016年の報酬改定
・大きな変更は「かかりつけ」の追加
→基準調剤に影響を与えました。

2018年の報酬改定
・大手の基本料引き下げ。地域支援体制加算の追加。
→8項目は厳しい印象でしたが、かかりつけ薬局には不可欠と捉え、
グループとして取り組む事となりました。

外部環境の変化(特に政策動向)に敏感であり、その変化を迅速に社内に
取り込み、前向きに捉え対応しようとする「あさひ調剤」の姿勢が伝わってきました。

そして次に、薬局ビジョンが出された2015年以降でかかりつけ薬剤師・
薬局をどの様に社内で推進してきたか、について下記の様な話がありました。

2015年
7月  社内での危機感共有
10月  目指すべきものの共有
11月  かかりつけの方向性の共有

2016年
2月  改定への戦略・課題検討
3月  かかりつけ薬剤師と面談
7月  特例解除の達成
10月  健康サポート薬局認定

2017年
6月  かかりつけ薬剤師プロジェクト発足

2018年
4月  地域支援体制プロジェクト発足
7月  地域支援実績の達成
12月  地域支援実績達成店舗は3店舗

国から発信される情報にアンテナを立て、それを理解・共有し、薬局全体で

「変わる!」

と決めた時に、良いスタートダッシュを切る為の準備を計画的にされている
印象を持ちました。

その中でも2017年6月に発足したかかりつけプロジェクトが現在の実績を
創出する上で大きな影響があった様です。

具体的な取り組み内容としては・・

・かかりつけ薬剤師を持っている患者に能動的な電話連絡をスタート(電話モニタリング)。
・服薬情報・残薬・効果・副作用・薬学管理を行い薬歴(P)に残す。
・店舗では日付確認シートを作成。
・1日に2~3名に電話を行い、来局予定日を過ぎたら服薬状況の確認・服用確認。

を行ったそうです。

なお、電話モニタリングをした際に患者さんの声として

「薬がなくなっていたことに気づいていなかった。ありがとう。」
「きにかけてくれてありがとう」
「(服薬に関して)気をつけます」

があり、現場の薬剤師は有効性を感じたと共に、患者さんは薬剤師を頼っているという実感があったそうです。

その他、トレーシングレポートの活用例や服用薬剤調整支援料を算定するまでの取り組みに
関するお話がありました。これらの取り組み例を通じて、

・薬剤師から能動的な情報提供・交換を行い、患者情報を常時収集する事が重要。
・外来服薬支援を実施する事はプレアボイドに繋がり、取り組む価値は大きい。

という事をメッセージされていました。

セミナーの最後に、

「かかりつけ薬局に求められる8つの実績要件は、全てに取り組む事で患者にとって安心・安全、
質の高い医療を実現する事が出来ます。実際に各種取り組みを進める中で連携が強化され、
能力が向上した事を実感しています。」

というお話がありました。

セミナー冒頭から最後まで・・

「調剤報酬改定を前向きに捉え、これまで以上に質の高い医療を提供する」

という一貫した姿勢を感じました。

弊社はこれまで医療業界を中心に多くの組織強化や人材育成のお手伝いをして参りましたが、
ここまで計画的で徹底した変革推進を実践している組織はあまり記憶がありません。

アイングループ「あさひ調剤」の組織運営のレベルの高さを垣間見る機会となりました。

同時に、本セミナーを通して、

「対人業務の対応力向上」の為の意識改革・能力開発

は体系的・計画的・実践的・継続的に行っていく事の必要性を感じました。
場当たり的な取り組みの延長線上には、上記の様な成果・結果獲得は望めません。

皆様の今後の取り組みの参考になれば幸いです。