先日某薬局にて薬歴作成力向上を目的とした研修会を担当させて頂いた。
薬歴とは「薬剤服用歴の事で薬剤師が行う調剤や服薬指導の内容を記録したもの」である。(ウィキペディアより)
これまでの薬剤師向けの研修から、
「薬歴とは記録する(書く)為のもの」
「報酬を頂く為に行うもの」
という世界観を持つ薬剤師が多い様に感じている。いずれも薬歴の意義に適う捉え方である。
広域薬局を中心に薬剤師に最新の調剤報酬の仕組みを学習させ、
新たな加算を得る服薬指導(と薬歴記入)を行っているが、厳しさを増す経営環境の中では必然であろう。
一方、対人業務の重要性が増す中「薬歴は書くだけのものでは無く、読んでもらうもの」と捉える流れがある。
薬歴を十分に確認せずに患者応対し、クレームになってしまうケースはよくあるが、この原因は2つある。
1つ目は、薬剤師が薬歴の記載内容を十分に読まなかった事。
2つ目は、薬歴の記載内容が分かり難い事。
前者を解決する為には患者のこれまでの治療経緯に関心を持つ事、つまり患者への共感的理解が重要になってくる。
一方、後者を解決する為には「薬歴は書くものでは無く読んでもらうもの」という意識転換と、分かり易く書く術を身につける必要がある。
これまで色々な薬局の薬歴を見る機会があったが、「この患者に何でこういう指導をしたのか、S・O・Aの記載内容からは読み取れない。」と感じる事は少なくなかった。
恐らく疾病や薬学的な知識は十分にあるが、発信する(話す、書く)術が磨かれていない薬剤師が多いのだと思う。
薬剤師の業務が対物から対人中心に変わる中で、薬歴の位置づけも変わってくる。
かかりつけ薬局と患者から認知される為には、一人ひとりの患者の治療経緯を薬剤師間で適切に共有する事が求められる。
このインフラとなるのが薬歴である。インフラを正しく活用する為には、上記に挙げた意識転換と分かり易く書く技術が必要だが、
そもそも薬歴を社内研修のテーマとして取り上げている薬局(特に中堅~中小規模の薬局)が少ないのが現状である。
前置きが長くなったが、冒頭の研修はこの様な背景の中で行ったものだ。
具体的な研修内容は弊社HPにある「薬歴作成力向上研修」に譲るが、他者に読んでもらう為の薬歴作りに必要な考え方、方法論の習得を目的に据えて研修を行った。
受講者からは、
「薬歴の書き方、患者様との接し方を改めて考える良い機会になった」
「患者様の話を聞きながら整理し、他者に伝わる薬歴を書ける様になりたい」
という声を頂いた。
「かかりつけ薬局・薬剤師」と患者から認識してもらう為には、薬剤師が保有する知識・情報をTPOに合わせて如何に発揮できるか?が鍵になるだろう。
だからこそ読んで貰う為の薬歴こそが今後の薬局経営において重要な意味を持つ事になる。
本ブログが生き残る、選ばれる薬局経営を考える際の一助となれば嬉しい。