かかりつけ薬剤師育成プログラム~2年目研修~

前回ブログでは「かかりつけ薬剤師育成プログラム」の
「1年目研修」についてご紹介しました。

今回はシリーズ第二回として2年目研修をご紹介します。

本研修のテーマは、

「薬局実務における心理的コミュニケーション」
(気持ちに「寄り添う」コミュニケーション)です。

慢性疾患の患者が増加する中で、相手の気持ちに寄り添うコミュニケーションが今まで以上に重要になってきます。
その為には1年目研修で扱う言語情報の裏にある「患者の気持ち」に焦点を当てる必要があります。

皆さんは怒っている時、悲しい時に周囲の方にどんな風に接してもらいたいでしょうか?
よく見るのは、

「そんな事でくよくよするなよ!」
「君が怒っているのは〇〇が上手く行かなかったからでしょ?」

という周囲からの投げかけです。
投げかけた側からすれば励ましているつもりでも、投げかけを受けた方は
果たしてどんな気持ちでしょうか。時と場合によって変わりますが、
強く憤りを感じていた場合や悲しみが深い場合は、

「私の気持ちを分かってもらえていない・・」

と感じる方もいるでしょう。
一般的に他者理解には4つのパターンがあると言われています。

1つ目は評価的理解です。他者の言動・行動・状況の良し悪しを判定します。
上記の例「そんな事でくよくよするなよ!」がこれに当たります。

2つ目は分析的理解です。他者の言動・行動・状況のトリガー(引き金)を
判定します。上記の例「君が怒っているのは・・」がこれに当たります。

3つ目は同調的理解です。他者の話に表面的なリズムを合わせるイメージです。
例えば、他者が話す所作に合わせて頷くが「心ここにあらず」という感じです。

4つ目は共感的理解です。他者の話を受け止め、気持ちやその気持ちが生まれた
経緯を理解します。「悲しかったんだね・・」「頭にきたんだね・・」という様な
相手の気持ちを察する言葉を返す事が入り口になります。

これら4つの理解に優劣は無くTPOに合わせて4つの理解を使い分ける事が大切です。
因みに薬剤師は職業柄、評価的理解や分析的理解(例:SOAP)を行う事が多いです。

昨年10月のブログ「コミュニケーションテクニックの活用:第三回『心理的傾聴』」にて、

薬「前回から少し時間が経っていますが、お薬は間に合っていましたか?」
患「仕事が忙しく、飲めない時もあったので間に合いました。」
薬「飲み続ける事が重要(評価)ですので、飲み忘れが無い様に気をつけて下さい。」

という服薬指導の場面を取り上げましたが、これは典型的な評価的理解→指導の流れです。
「患者の服用の指導する事は薬剤師はの果たすべき使命」
という意図で患者へ投げかけを行っているのですが、患者の中には

「上から目線だな・・」
「分かってはいるが飲めなかっただけなのに・・」

と感じる人もいるでしょう。
一方、

薬「お薬は間に合っていましたか?」
患「仕事が忙しく、飲めない時もあったので間に合いました。」
薬「仕事でお忙しい中、飲み忘れなく薬を続けて頂くのは大変ですよね。(受容・共感)
  ちなみに飲み忘れてしまった要因で思いつく事はありますか?」

という様に最初に受容・共感のステップを入れる事で患者に「私の状況を受け止めて貰えている」と感じてもらう事ができます。

2年目研修では、「コミュニケーションの作用機序(意図→言動・行動→影響)」と題して
自分の意図が相手に伝わる為の留意点を体感実習「3つの問い」で学習します。

ここでは相手にとって「良かれ」と思って取った言動・行動が、必ずしも相手に伝わらない事があり、
その原因(相手の認知が真実 他)は何なのか?という事を考えて行きます。
(実習の詳細な進め方に関心がございましたら、お気軽にご連絡下さい!)

そしてこの原因の対応策の一つである「受容・共感」のステップを薬局の実務場面を想定して
繰り返しロールプレイングする(ノック実習)事により学習します。
(ノック実習は「受容・共感」が「現場でも使えそう・・」と感じて頂く事をゴールとしています)

最後に、何故2年目に心理的コミュニケーションを実施するのか?に触れておきたいと思います。
その理由は、ある程度実務を経験する中で

「患者さんやスタッフと上手くコミュニケーションが取れない事があるな・・」

と問題認識を持つ事、それが入社2年目には多くあるからです。
地域包括ケアが推進される中で、今まで以上に自分と違う前提(価値観・考え方)を持っている人との
対話の機会が増えていきます。その様な状況に対応する為の土台を2年目研修で学習していきます。

それでは次回3年目研修のブログもご期待ください!

「かかりつけ薬剤師育成プログラム」リニューアル