調剤報酬改定が薬剤師にメッセージする事

2月7日に調剤報酬改定内容の全貌が明らかになり、
今回の改定は膨れ上がる医療費を如何に効率的に活用するか?が主要な論点でした。
門前薬局や医療モールを展開している広域薬局は、薬局運営の在り方や収益モデルの根幹から見直しが迫られています。

某薬局幹部から、

「今回の改訂で大手広域薬局を筋肉質にしておき、次回改定で中小規模の薬局の淘汰を考えているのではないか。
なにせ厚労省は将来的に薬局を3万軒程度にする意向があるのだから。」

という話を聞きしましたが、改めて今回の改訂内容のみに反応するのではなく、2025、30年を見据えた「あるべき姿」とそれを実現する為の「課題」を考える必要があると感じました。

そこで今回は、「調剤報酬改定が薬剤師にメッセージする事」について考えてみます。

既に多くの有識者から様々な視点からの解釈が発信されていますが、
ここでは「対物から対人業務」の視点から読み取る事の出来るメッセージについて取り上げたいと思います。
大きくは

①地域医療への積極的な参画
②かかりつけ機能の強化
③ポリファーマシー対策

の3つです。

上記①は地域支援体制加算が新設され、その施設基準が

・他の医療機関との連携体制や一定の実績

である事から、今まで以上に多職種連携を通じた地域医療への貢献が期待されています。
上記②は

・薬歴管理料
・かかりつけ薬剤師料
・包括管理料

の点数が引き上げられた事から、患者へ踏み込んだコミュニケーションが期待されています。

最後に上記③は

・服用薬剤調整支援料

が新設された事から、今まで以上に患者の服用実態を把握し、処方元が納得する文章で処方内容の再設計を提案していく事が期待されています。
つまり薬剤師は、患者や他の医療機関へこれまで以上に踏み込んだコミュニケーションをとる事が必要です。

下記スライドにて

・上記①~③
・薬剤師がコミュニケーションをとる相手
・求められるコミュニケーションの種別

の関係を示しました。

上記1.では他職種、つまり自分と違う視点を持つ人との意思疎通が求められます。
意思疎通する為には自分の価値観に固執せず、相手の価値観を受け入れる感性が必要です。
これを弊社では異文化コミュニケーションと呼んでいます。(詳細はブログ「4年目研修」をご覧下さい)

上記2.では今まで以上に患者の服用実態を把握する必要があります。
この為には患者から情報を引き出さなければなりませんが、その前提には患者と薬剤師の信頼関係があります。

これまで患者の信頼を勝ち取る為には「薬学知識」が必要と言われてきましたが、これは対物時代の発想の様に感じます。
対人時代においては、

必要条件:「患者の気持ち・感情に寄り添うコミュニケーション」
十分条件:「薬学知識」

となるでしょう。慢性疾患の患者が増えていく事からも、患者の心に寄り添いながら伴走する薬剤師の姿勢が、情報収集の前提と考えるのは自然な流れでしょう。
この文脈で求められる対話の在り方を弊社では心理コミュニケーションと呼んでいます。
(詳細はブログ「2年目研修」をご覧下さい)

一方、把握した患者の服用実態は処方元に伝える必要があります。これまでは疑義照会が処方元との主なコミュニケーション場面でしたが、
今後は上記3.より再設計した処方内容を文章で提案する必要があります。

処方元の診察の合間を縫ってのコミュニケーションとなりますので、「簡潔明瞭で納得感のある」コミュニケーションが求められます。
これを弊社では論理的コミュニケーションと呼んでいます。
(詳細はブログ「1年目研修」をご覧下さい)

 『生き残る薬剤師』になる為に 
『生き残る薬剤師』になる為に
http://ptc.co.jp/blog/2017/12/08/35/
薬剤師のコミュニケーション・マネジメント研修情報サイト

最後に、対薬剤師向けの「文脈を伝えるコミュニケーション」について触れておきます。
「文脈」とは、薬局を取り巻く環境動向(過去・現在・未来)の事を指しており、
「文脈」を物語の様に部下・後輩薬剤師に伝え、それを前提に報酬改定により新たに薬剤師が取り組む実務(例:他の医療機関とのコミュニケーション)の必然性を伝えます。
これを弊社では「文脈を伝えるコミュニケーション」と呼んでいます。
(詳細はブログ「3年目研修」をご覧下さい。)

 『生き残る薬剤師』になる為に 
『生き残る薬剤師』になる為に
http://ptc.co.jp/blog/2018/02/07/39/
薬剤師のコミュニケーション・マネジメント研修情報サイト

ここまで「対人業務」の視点から改定内容を見てきましたが、薬剤師のコミュニケーション力が今後の薬局運営の重要なインフラである事を再認識させられるのではないでしょうか。

一般的に社会インフラの整備には中長期の視野が必要ですが、薬剤師のコミュニケーション力向上にも同様の事が言えます。
一回研修を受講しただけで飛躍的にコミュニケーション力が高まる事はありません。

計画的に組まれたOff-JTとOJT(評価・処遇も含む)を実践した先に、インフラとして機能するコミュニケーション力があるわけです。
経営は「短期的視点」と「長期的視点」のバランスが必要と言いますが、薬剤師のコミュニケーション力向上を長期的視点で捉え、
各薬局・ドラッグストアーにて計画的な教育(Off-JTとOJT)が実践される事を切に願います。