2020年度調剤報酬改定のメッセージと課題

新型コロナウィルス感染拡大を抑制する為に、私達一人一人には「新しい生活様式」へ移行する事が求められています。
アフターコロナの世界はどんな風景になっているのでしょうか。
ビフォーコロナの価値観や暮らし方とは一線を画す事は間違いないでしょう。

まさに古の教え

「変化するものが生き残る」

が全人類に求められています。

 

そんな中、新年度がスタートして1カ月が経ちました。
薬局業界においても「対物から対人」への移行を企図し、昨年度の0402通知や改正薬機法に続き2020年度調剤報酬改定が発表されました。

本改訂の評価として、

「外枠での引き下げが無く前回改定と比べ大きなインパクトでは無かった」

という声がある一方、

「次回改定では調剤報酬の一本化や薬局機能認定制度による算定基準へのシフトが見込まれており、2年後に向けて確実に変革の歩みを進める期間である」

という声も耳にします。
正に、薬局が生き残る為にも変化する事が求められています。

そこで今回は、本改定のメッセージと課題について取り上げます。

厚生労働省保険局が作成した本改訂の概要資料に「薬機法等制度改正に関するとりまとめ」というスライドがあります。
そこには現在の薬局の評価について、

「現在の医薬分業は、政策誘導をした結果の形式的な分業」
「単純に薬剤の調製などの対物中心の業務を行うだけで業が成り立っている」
「多くの薬剤師・薬局が患者や他の職種から意義を理解されていないという危機感がない」

という記載がありました。
このスライドは平成30年12月厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会の内容を基に作成されていますが、2年後の現在でも本スライドが引用されている事自体が、薬局の変革が進んでいない実態を表しています。

これらの課題認識を踏まえ、本改訂では、

・かかりつけ機能の評価
・対人業務の評価の拡充
・対物業務等の評価の見直し

の3つが主要テーマとして検討されました。
これらを通じたメッセージは、

「薬局薬剤師には最適な薬物療法を行う事で、ポリファーマシー、重複投薬、残薬を解消する事が求められている」

という事でしょう。

一方、このメッセージを実践する上での薬局の課題は何でしょうか。
結論から言いますと

「2つの連携強化」

です。上述しました薬局機能認定制度では各薬局の機能を踏まえ、

「地域連携薬局」
「専門医療機関連携薬局」
「その他の薬局」

の何れかに分類されます。認定基準の詳細は今後発表されますが、「連携」が重要な指標になる事は間違いないでしょう。
では、「2つの連携強化」の2つとは何か。

1つ目は「他職種」との連携強化です。
他職種との連携の入り口の一つとして多職種連携会議があります。
今回の改訂では地域支援体制加算の実績要件が下記の様に見直されました。

(基本料1の薬局)
多職種と連携する会議に1回以上出席している事

(基本料2・3の薬局)
多職種と連携する会議に5回以上出席している事

因みに上述の会議とは、

①地域ケア会議
②サービス担当者会議
③退院時カンファレンス

の3つを指します。
弊社の調べでは、多くの薬局において上記の会議参加状況には店舗間格差がある事が分かっています。
この背景には当事者である薬局長、薬剤師の意識格差がある様です。
参加状況が芳しくない薬局からは

「定期的にファックスで地域ケア会議の案内が送信されていたがスルーしていた」
「そもそも上述の会議がいつ、どこで行われているのか分からいない」
「外来患者の対応で手一杯」

という声が上がっている様です。
「他職種」との連携を進める上では、この様な会議参加に対するモチベーションが低い店舗数を減少させる事が課題と言えるでしょう。

2つ目は「処方元」との連携強化です。
今回新たに追加された算定項目として、

特定薬剤管理指導加算
吸入薬指導加算
調剤後薬剤管理指導加算

があります。これらに共通する事は、

「医師の求めに応じて」

薬剤師が対応した際に算定可能となる点です。
薬局にはこれまで以上に処方元との連携が求められますが、一方、処方元対応が十分に出来ていない店舗が数多あるのも事実です。

現状を表す2つの例をご紹介します。

1例目は処方元へのコンタクトに対する意欲が低いケースです。
本部から薬局長に処方元訪問の指示を出しても中々足を運ばない為、
「医師ではなく看護師や受付でも良いから訪問して」
と伝えるものの、結局重い腰は上がりませんでした。

2例目は処方元との折衝交渉力に課題があるケースです。
処方元へ訪問した際に薬局側の要求ばかり伝え、処方元から煙たがれてしまい関係構築できずに面会が終わってしまいました。

これらの例より、処方元との連携強化の為にはモチベーションや折衝・交渉力の向上が課題と言えるでしょう。

それでは、これらの課題にどの様なスタンスで向き合うのが良いでしょうか。

「餅は餅屋で対応する」

これに尽きると思います。
薬剤師は自らの専門性が求められる事に専念し、それ以外の専門性や能力が求められる場面は他の力を借りるという事です。

その理由は2点あります。

1点目は薬剤師は専門性を踏まえ患者・生活者の視点で情報収集を行う事を通して、今まで以上に最適な薬物療法への関与が求められるからです。
上記の新規3つの項目を算定する為には改正薬機法で義務付けられました服薬後のフォローが前提となります。
具体的には、処方元が希望する患者(特定の疾病・薬)の服薬状況を把握し、その内容を自らの専門性を駆使して分析し、処方元へ報告・提案する事が求められます。
つまりこれまで以上に、薬の専門家として処方元と患者の間を繋ぎ、最適な薬物療法に貢献する事が重要になってくるからです。

2点目は多職種連携に求められるコミュニケーション力は一朝一夕には身につかないからです。
多職種連携の際には異文化コミュニケーションが求められます。
具体的には自分とは違う価値観の人々との意思疎通が求められるわけですが、これを実践する為には、幾重もの経験を踏まえて創られた「思想」や「能力」が必要です。
これまで5,000名を超える薬剤師の方々に研修を企画・実施してきましたが、その経験を通じて感じた事は、コミュニケーションに対して確たる「思想」や「能力」を持っている受講者は、決して多くは無かったという事です。

故に薬局は研修を企画・実施している訳ですが、それはあくまでも経験の入り口に過ぎないのです。
研修で学習した事を実践し、そこから得られた教訓を積み重ねていく一連の過程が経験となります。
この一連の過程を何度も何度も反復する事により、「思想」が創られ「能力」が開発されるのです。

では、「2つの連携強化」を実現する為に、「餅は餅屋で対応する」をどの様に実践すべきでしょうか。
代替案は2つあります。

 

1つ目は元MR・MSの人材を採用し、「2つの連携強化」をミッションに活動してもらう事です。
既に多くの薬局が採用している代替案です。
メリットは処方元対応の経験則やコミュニケーション力をミッション実現の為に活用できる事です。
デメリットは採用したスタッフが高齢の場合、

・当人が持っている人脈情報が古い
・若年層とのコミュニケーションに難がある(ジェネレーションギャップ)

為に目覚ましい成果が上がらない事です。
スタッフの年齢や能力を踏まえ、採用の判断を行う事がポイントになります。

2つ目は「2つの連携強化」をミッションとした部署を創設する事です。
そもそも「2つの連携強化」はエリアマネージャーへの期待であり、仕事とお感じの方は多いのではないでしょうか。
しかし、多くのエリアマネージャーは店舗の応援業務や人繰りに大半の時間を割いているのが実状です。
中長期的にはエリアマネージャーを育成する事で、上述のミッションを踏まえた守備範囲が担える様になるのが理想ですが、一朝一夕にはいきません。
故に、エリアマネージャーをサポートする位置づけとして、「2つの連携強化」をミッションとする部署を創設し、コミュニケーション力のあるスタッフにその任に就いてもらうのです。
このスタッフには様々な価値観の方と意思疎通する適性が求められます。その意味では必ずしも薬剤師である必要はありません。
薬局と他医療機関を繋ぐ触媒役として活躍できる方が求めるスタッフ像です。

上記で触れました様に、2年後の次回改定を見据え、短期・中長期両方の視点で変革を進めて行く事が求められています。
その際の課題である

「2つの連携強化」

への向き合い方を考える上で、本ブログの内容が少しでも参考になれば嬉しいです。

なお、弊社では今年度より、上述の「2つの連携強化」をご支援するサービス提供を開始致します。
詳細は改めてブログで発信致しますが、もしご興味ご関心のある方はお気軽にご連絡下さい。
最後までお読み頂きまして有難うございました。