コミュニケーションテクニックの活用:第二回『論理的傾聴』

先日NHKのおはよう日本の1コーナーで「かかりつけ薬剤師」の特集が組まれていました。
取材担当のアナウンサーが自身が服用中の薬をとある薬局に持ち込み、
対応した薬剤師がアナウンサーの実情に耳を傾けつつ、飲むべき薬を仕分けしていました。
その取材映像をスタジオで見ていたアナウンサーが一言。

「ここまでして頂けるなら、かかりつけ薬剤師を持った方が良いですね!」

いささか演出がかっても見えましたが、これがあるべき姿なのでしょう。
患者さんにとっての「かかりつけ」となる為には、今まで以上に患者さんの実情(治療経緯や気持ち等)に耳を傾ける事が求められます。

そこで今回は患者さんの実情に耳を傾ける為の方法論(傾聴)について取り上げます。
弊社では傾聴の方法を二つに分類しております。

1つ目は心理的傾聴

非言語情報を用いて話している相手に「聴いてもらえている」心地よさを与える事。

 

2つ目が論理的傾聴、

言語情報を用いて相手の話を整理する事でこちらが聴きたい情報を引き出す・明確にし、相手に「話の内容を正しく理解している」と感じてもらう事です。

 

この二つを実践する事で患者様の持っている考え・想いを引き出し、寄り添った提案をすることが可能となります。
今回は「論理的傾聴」に焦点を当てます。

 

弊社の研修内では論理的傾聴において3つの手法を取り上げており、その3つの概要をご紹介致します。

①オウム返し

相手の話した事を聴き返す・言い直す手法です。
例えば・・・

「朝から熱があって・・」

という発言に対して、

「朝から熱があるんですね」

と返す様な手法です。
これを行う事で相手に「ちゃんと聴いてもらえている」と安心感を与えると共に、 相手に自らの発言を整理してもらうこともできます。

 

②深堀

相手が発言した事柄の中に抽象的・定性的な表現が見られる際に、
「もう少し詳しく話していただけますか?」等相手の発言内容を掘り下げる、つまり具体的な情報を引き出す手法です。
これを行う事で、相手の話した内容に対する興味・関心を示すと同時にお互いの認識のズレを防ぐ事ができます。

例えば・・・

「後でまた来ます」と言う患者様、
上記の「後で」の様に同じ文言でも人によって異なる解釈ができる場合、
深堀を行う事で「後で」が「○分後」という事が明確になり、それに合わせた準備・対応をする事ができます。

 

③要約

相手の話を聴いた上で、
「要するに~という事ですね」と相手の言いたい事を簡潔にまとめる手法です。

これを行う事で相手に「ちゃんと理解してもらえている」と安心感を与えると共に、
話し手・聴き手の認識のズレを防ぐ事ができます。
また、話が長く、まとまっていない相手が伝えたいことを確かめる際に有効です。

 

以上3つの手法をご紹介致しました。

傾聴を行う事で患者さんの情報を的確に引き出し、より患者さんの実情を踏まえた服薬指導・情報提供を行う事ができます。
また、お互いの認識のズレを防ぐことで顧客満足の向上・クレームの減少の効果も期待できます。
ここまでご覧になられて、

「やって当たり前の事だよね」

「いやいや、自分は出来ているし・・」

と感じられている方は少なくないと思われます。
弊社の研修会の中でも、多くの参加者が最初は同様に感じられます。
ただ、いざロールプレイングを通して上記3つを実体験してみると、

「意外と出来ていない・・。」

という感想を持たれます。
我々も一患者として薬局・ドラッグストアで薬剤師の応対を受ける事がありますが、
「傾聴してもらえていない・・」と感じる場面は少なくありません。

本内容が患者さんより「かかりつけ薬剤師」と認知される為の一助となれば嬉しいです。

かかりつけ薬剤師育成プログラムヒューマンスキル開発