「かかりつけ薬剤師育成プログラム」研修アンケート報告-2

前回のブログではかかりつけ薬剤師育成プログラムの年齢別傾向・地域別傾向について取り上げました。

今回は、前回予告させて頂いた通り、

2.PTCを新規で導入頂いた薬局の受講者 or 継続利用頂いている薬局の受講者
3.新卒採用の受講者 or 中途採用の受講者

の傾向について取り上げると共に、薬剤師のコミュニケーション研修を企画する際の留意点について考えてみたいと思います。

それでは下記の表をご覧下さい。

上記2・3の切り口で各質問結果の平均値を出しました。
このデータより2つの傾向が見えてきました。

1つ目は、新規・継続導入別においてQ1、Q5の評価が継続導入>新規導入でした。

「初年度は受講するのが億劫でしたが、受講したら面白かったので2年目の今年は受講できる事を楽しみにしていました。」

「昨年研修を受講した先輩から「実務で使える内容」と聞いて参加しました」

これらは継続導入頂いている薬局の受講者の典型的な声です。
受講経験者が増える事により「コミュニケーション研修」に対する否定的な雰囲気が緩和され、事前期待が高まりました。
また事前期待が高まる事により学習成果(学習内容を実践するイメージ)に対する評価が高くなる傾向にありました。

まさに「継続は力なり」ですね。

2つ目は、新卒採用・中途採用別においてQ1、Q5の評価は新卒>中途でした。
前回ブログで薬剤師のコミュニケーション研修は「年齢」が重要な因子になる事をお伝えしました。
上記データでは新卒採用より中途採用の平均年齢が高く、ここでも「年齢」の影響を受けた恰好となっています。

ここまでの話をまとめますと、薬剤師のコミュニケーション研修においては、

「年代が上がると事前期待や実践確度の評価が下がる」
→中高年層になるとコミュニケーション研修に否定的な受講者の割合が増える

「継続した教育機会により事前期待が高まる」
→受講経験者が増える事でコミュニケーション研修への否定的な雰囲気が緩和する

の2つの傾向がある事が分かりました。

最後にこの2つの傾向を踏まえ、薬剤師のコミュニケーション研修を企画する際の留意点を2つ挙げさせて頂きます。

1つ目は、

「新卒を中心とした若い年齢層を主要ターゲットとする」

事です。

一般的に教育の難易度は①知識習得②能力啓発③態度変容の順に上がっていきますので、
中高年の薬剤師の態度変容を研修のみで目指すのは難しいです。(評価や処遇を組み合わせた体系的な対応が必要です。)
但し、中高年の薬剤師においても「学びたい!」という態度の方はこの限りではありません。

コミュニケーション力に課題認識を持つ全ての方が、能動的に教育を受けられる環境創りが重要だと考えます。

2つ目は、

「受講者の事前期待を高める」

事です。

上述しましたが事前期待の高さは学習成果の評価に影響します。

あくまでも研修は手段であり、その目的は受講者の行動変容にあります。
行動変容のきっかけは、自己のコミュニケーションに対して課題認識を持つ事です。
そして認識した課題と研修テーマが合致すれば事前期待は必然的に高まります。

しかし、薬剤師の業務は

「対物から対人」

と言われて久しいですが、業界全体としてコミュニケーションに対する課題認識は未だ十分とは言えません。その根拠として、製薬メーカーや卸を初め他業界で実施する研修において事前期待が

「3.0」を下回る事は皆無

であるという事です。この背景には受講者の業界環境への見識の差がある様に思います。

弊社講師から受講者へ、

「薬局ビジョンの要旨を話せる人はいますか?」
「薬局ビジョンが出た経緯を話せる人はいますか?」

と投げ掛ける事がありますが、自信を持って回答する方はほんの一握りです。

一方、製薬メーカーや卸の営業職(MRやMS)に対しては、

「MR・MS不要論」

が言われて久しいですが、早期退職やリストラなど変化の波を肌身を持って感じる状況にいます。

「現状維持は後退」

多くのMR・MSが持つ課題認識ではないでしょうか。自らが変わる事が職能を維持する唯一の選択と言えるでしょう。

この様な環境下では、

「変化するものが生き残る」

が大前提となります。薬剤師にとっては「対人業務」への対応力の向上が自らの存在価値を維持する上で必須ですが、現状ではMR・MSの様に職を追われる状況は少ない事から、温度差を感じざるを得ません。

この様な環境下では、

「継続的に業界動向を知る機会」

が重要です。例えば、自前でコミュニケーション研修を実施している場合は、

「受講前に薬局長から受講者へコミュニケーション研修を始めた背景(例:対物から対人業務へのシフト)を伝える」

事が重要です。変化の荒波が押し寄せている事と荒波を泳ぎ抜く術を身に付ける必要性を伝え、受講前に健全な危機感を持たせる必要があります。

また上述しましたが、

「コミュニケーション研修を単発では無く、継続的に実施する」

事も必須と言えるでしょう。受講経験を通じて「コミュニケーションの大切さ」を体験的に理解する事が事前期待向上の近道と言えるからです。

ここまでお読み頂き有難うございました。

多くの薬局の中期計画には「セルフメディケーション推進」「地域医療への積極的参画」が柱として組み込まれています。
これらを推進していく上では「対人業務への対応力」が必須となりますが、一朝一夕には向上しません。上述の通り、体系的で継続的な取り組みが必要です。これまでの薬局経営の世界観を超越した発想が求めらる事は言わずもがなでしょう。

最後に、本ブログが「対人業務」に強い薬剤師育成の参考になれば幸いです。

「かかりつけ薬剤師育成プログラム」リニューアル