今後の保険薬局のあり方を考える

国の財政赤字は1,000兆円を超えた。その要因は、言わずもがな、税収を大きく超える歳出である。

その中でも年々存在感を増す社会保障費の抑制に国は躍起になっている。
1990年度(69.3兆円)における社会保障費が29.4%に対して、2014年度(95.9兆円)では54.0%になっている。

社会保障費の多くを占める国民医療費は、2011年度が39兆円、15年度が44兆円、25年度で60兆円に達するという見通しである。

老齢人口のピークは、2050年代と言われている中で、このトレンドに大きな変化は無さそうだ。今後3年連続で行われる薬価改定により、保険薬局は既存の収益構造(例:門前薬局・マンツーマン分業)の見直しを迫られる、と言うのが業界関係者の大半の見方である。

一方、アベノミクスの成長戦略のもと、未病患者に対する健康増進を目的とする新市場創造の動きも見られている。食品メーカー各社から発売される「トクホ」や「サプリメント」は、今や完全に市民権を得ている。また食品の機能表示制度の整備により、様々な食品が健康増進に紐づくメッセージを発信しやすくなっている。

また、薬剤師会も面分業推進の文脈の中で、「かかりつけ薬局・薬剤師」として患者に認知される様な店作り・薬剤師育成の必要性をメッセージしている。処方箋を持たぬ患者、つまりお客様が来店しやすい店構え、薬剤師・医療事務スタッフの接客の必要性を訴えている。

この様な中で、今後保険薬局は①どうあるべきか?また、②何をすべきか?

①については、「業の再定義」が一つの解であろう。
また、②については、「再定義した業へ転換する為に必要な従業員の意識醸成」が必要であろう。

①については、広域調剤各社の動きが正にそれに当たる。
他業態とのコラボレーション事例(例:CVSとの共同出店・駅中への出店)
を挙げれば数限りない。つまり先見性のある経営者は、調剤業は起源としながらも、その業態を再定義する動きを見せている。

 

一方、②については、十分に各社が取り組めている状況には無い様に感じる。
弊社では、多くの薬剤師との対話の機会があるが、上記①の様な文脈を共感的理解(つまり当事者としての理解)している方は少ない様に思う。

多くの保険薬局・ドラッグストアーでは、業の再定義は進むものの、
運営する現場の意識が変わらず・・・の「ねじれ状態」にある様に感じる。

この「ねじれ状態」の解消は、先進的な取り組みを進める広域薬局・ドラッグストアーにおいて、喫緊の課題と言えるだろう。
(もし本文に興味を持って頂いた方には、弊社HPの「お悩み解決の為の処方箋」の中にある、「薬局長・管理薬剤師の指導力向上研修」のサンプルテキストをダウンロード頂き、ねじれ解消の為の研修内容をご覧頂きたい。)

最後に、一言。
真の問題は「ねじれ状態」すら創られていない薬局(環境動向を十分に認識しきれない経営者)にあると思う。
本テーマが今後の薬局経営を考える際の一助となれば、嬉しい。

 

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