コミュニケーションテクニックの活用:第一回『アサーション』

コミュニケーションについて、巷では多くのテクニックや方法論が紹介されていますが、
いざ、患者応対(服薬指導 等)や店舗内でのコミュニケーション(指導・ホウレンソウ 等)に活かそうと思っても実務に結びつけることができず、実践に至らなかった経験をお持ちの方は少なく無いでしょう。

そこで数回に分け、効果的な方法論の店舗での活用術をご紹介していきます。

第一回は「アサーション」です。

 

昨今、多くの書籍・雑誌・WEBサイトで紹介されていますが、アサーション(アサーティブコミュニケーション)は、

「自分も相手も大切にする、自己表現」

です。「自分も相手も大切にする」という理念を前提にしている点がユニークな所です。
弊社「心理コミュニケーション研修」の実習の一つとして取り上げています。

具体的には・・

STEP① (相手に伝えたい)事実の共有

~数秒の間を取る~

STEP② (①で共有した事実に対する)評価の共有

STEP③ (②で伝えた評価を根拠に)相手への提案

 

の順番で相手に情報を伝えるトレーニングを行います。

 

あくまでも一般論ですが、相手に何かを伝える時、兎角STEP②や③から始めてしまう場合が多いものです。
②・③の内容が相手にとって好ましい場合は問題ないのですが、耳障りな内容の場合は著しく納得感を損なう可能性があります。

それは何故か?②・③は主観的情報(解釈した情報)だからです。例えば、

「あなたにはそう見えた(感じた)かも知れませんが、私は違います!」

と感じてしまう場合は、主観的情報を中心に会話が進んでいるのでしょう。
解釈は人によって大きく異なる場合があり、それを踏まえずに会話を進めると、相手に納得してもらう事が難しくなるのです。

一方①は客観的情報、つまり「解釈が発生しない情報」です。いわゆる事実です。
事実は無色透明な情報ですので、誰にとっても受け入れざるを得ない情報です。
故に抵抗感が生まれづらい情報といえます。

本題に戻り、アサーションの店舗での活用場面を見てみましょう。

部下指導を例にすると・・


(部下が患者さんに挨拶をしなかった際の指導場面)

 

「今、来店された患者さんに挨拶していなかったよね?」STEP①事実の共有

 (間を取る)

「私には患者さんを無視している様に見えたのだけど・・。」STEP②評価の共有

「患者さんが来店されたら必ず挨拶してね。」STEP③提案


となります。①の事実を見た途端に②・③を口にしてしまう方が多いのでは無いでしょうか?
この時、往々にして部下は「患者さんを無視する」つもりはありませんので、指導内容に対して抵抗感を持つ事が多くあります。

 

 

今度は、患者応対の例を見てみましょう。


(患者さんから「処方された薬が足りないのですが・・」と問い合わせがあった場面)

 

「こちらのデータではお渡ししている様に記録されています。」STEP①事実の共有

「患者さんがお間違いでは無いでしょうか?」STEP②評価の共有

「もう一度、袋の中身を確認頂けますか?」STEP③提案


確かに方法論の通りに発信していますが、この内容では患者さんを怒らせてしまう可能性は高いでしょう。
冒頭で触れたアサーションの定義には、

「自分も相手も大切にする、自己表現」

とありましたが、「相手も大切にする」という理念が完全に抜け落ちています。
余談ですが、世の中に出回っている多くのテクニック・方法論が実践できない原因の一つに、方法論のみに固執して活用している事が挙げられます。

 

では、理念も方法論も意識した患者応対の例を見てみましょう。


「お薬の数が足りないのですね」STEP①事実の共有

「ご心配お掛けして申し訳ありません。」STEP②評価の共有

「私の方でも確認致しますので、患者様の方でももう一度ご確認頂けますか?」STEP③提案


上記の様な伝え方であれば、相手に受け入れてもらえる可能性は高まるでしょう。

 

社内・社外問わず、耳障りが悪いことを相手に伝える際に是非お試し下さい。
良い結果になる事をお祈りしています!それでは次回ブログでお会いしましょう!

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